映画の口コミ・評価をまとめたランキングサイトです。
Blog
  • HOME »
  • Blog »
  • 映画 »
  • 『火口のふたり』@アップリンク渋谷

『火口のふたり』@アップリンク渋谷

『火口のふたり』@アップリンク渋谷

September 06, 2019

『火口のふたり』@アップリンク渋谷

「火口」とは、富士山の火口を指す。賢ちゃんの浮気に気づきウソをつきながら直子を抱く賢ちゃん。その日に巨大な富士山のポスターの前で撮った全裸セルフィー。物語の後半になって、思いもかけない形で、二人は富士山の噴火を事前に知る。

この不可解な設定を除けば、フランス映画のように男女の睦みごとが延々と続く。登場人物は二人だけ。スクリーンに現れない賢ちゃんの別れた妻子、直子のフィアンセの存在を感じる。屋外シーンもあるが、鬱積した感じが消えない。幼なじみであり従兄妹同士のカップルは、男の浮気をきっかけにいったん縁が切れる。しかし、女の結婚式に出るために男が秋田に帰郷するところから物語は動く。

オープニングタイトルは男女のインティメットなツーショットの写真アルバムから始まる。アラーキーのようなタッチ。珍しいことに、オープニングタイトルに音楽がかぶせてある。写真もすべてモノクロ。親密どころか、二人以外には見せられない露わな姿。2015年の『この国の空』は荒井晴彦にしては色気がなく拍子抜けしたが、本作はあたまからこれだ。本編に入っても、お互いに相手を知り尽くした同士の直截な会話と遠慮のない性表現が続く。

直子は自衛官との結婚前に賢ちゃんと一夜限りで思い出に浸りたかっただけだ。結婚する理由は、子どもがほしいから。子どもがほしいのは女だから。賢ちゃんは浮気した女と結婚したが離婚。以後子どもの顔も見ていないし、定職にも就かず、女日照りの毎日。ひょっとしたらタダで…という下世話な欲望もあったかもしれない。

二人だけのあんなアルバムを後生大事に取っておく女も、結婚式に男を呼ぶ。

付き合っていたころはヒマを惜しんで屋外屋内と問わずセックスにいそしんでいた男は、相手の女の結婚式にノコノコ出ていく。

新居も購入した女は割り切っていた(はず)が、男は割り切れなくなり、式までの5日間を一緒に過ごすことになる。食べて(排泄して)、セックスするだけの5日間。そこに、噴火の内部情報。直子のフィアンセは自衛官で、災害復旧に動員されていたのだ。日本は上へ下への大混乱になるだろう。直子は賢ちゃんと別れたきっかけの日の「火口のふたり」セルフィーのバックの富士山の噴火を知り、フィアンセと別れ、賢ちゃんとあらためて行動を共にしようと。

この二人の力関係はどうだろう。直子は5歳上の従兄を愛していたが、裏切られる。賢ちゃんが浮気した相手と結婚していた期間は直子は離れていた。しかし、子どもがほしくて結婚が決まると、「あの頃に戻りたい」がために賢ちゃんを誘い、まんまとベッドイン。直子がセックスして本当に快感をおぼえるのは賢ちゃんだけだ。フィアンセともしたが、賢ちゃんほどではなかったらしい。肌を合わせられる男であることを確かめるだけの一日だけの逢瀬と直子は割り切っていたが、賢ちゃんはそうはいかなかった。セックスしていない匂いがしたという言葉どおり、賢ちゃん医は火が付いた。一日限定だったが、5日間限定となった。セリフのやりとりでは、この男女は対等だ。女はすっぱり割り切り、男は焼けぼっくいに火が付くと、ウダウダと女にまとわりつく。しかし、映像的には二人のセックスは男主導にみえるだろうな。立ったままとか、背後からとか、路地の暗がりでとか、特に女性が見ると、性交渉は男本位制のまんまに見える。そう見えてもおかしくない。なにせ、2018年グローバルジェンダーギャップ指数」は調査対象149カ国のうち日本は110位だからね。

震災は東北人の恨み辛みとともに、セリフで繰り返し言及されるが、この富士山噴火の一報が意味するものは何か。頭をよぎったのは『家族ゲーム』(1983)のラストシーン。一見本編とは無関係に見えるヘリコプターの不気味なローター音(報道関係者のヘリやドクターヘリではない、お腹に響くあの重低音は自衛隊しかない)。また、『愛のコリーダ』(1976)のワンシーン。国旗に見送られて行進する兵隊とは反対方向に向かう吉蔵の姿。共通するのは、不穏な未来。未来と言っても、遠い未来ではなく、もっと差し迫っている。差し迫ったタナトスと隣り合わせのエロス。直子の購入した戸建てがあるわけだし、そこで二人が同居するなら、そういう生き方があっていい。たった1回しかない人生。主役2人が『失楽園』と違い、若い設定なのが良い。エデンを追われて現代の日本に現れたアダムとイヴは不器用だったが、欲望に忠実でいられるのは幸福そうだった。

火口のふたり

引用元はこちらです。記事に関するご質問は引用元へお問い合わせください。http://blog.livedoor.jp/turtle_and_owl/archives/80906728.html


人気ブログランキング

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

カテゴリー

PAGETOP
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Translate »