新聞記者★★★・5

“権力の監視役”としてのマスメディアの力が急速に弱まっている現代の日本で孤軍奮闘する現役新聞記者による同名ベストセラーを原案に、官邸とメディアの深い闇をリアルかつ赤裸々な筆致で描き出した衝撃の社会派ポリティカル・サスペンス。主演は「サニー 永遠の仲間たち」「怪しい彼女」のシム・ウンギョンと「不能犯」「孤狼の血」の松坂桃李。共演に本田翼、北村有起哉、田中哲司。監督は「デイアンドナイト」「青の帰り道」の藤井道人。

あらすじ:日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育った東都新聞社会部の若手記者・吉岡エリカは、記者会見でただ一人鋭い質問を繰り返し、官邸への遠慮が蔓延する記者クラブの中で厄介者扱いされるばかりか、社内でも異端視されていた。そんなある日、社会部に大学新設計画に関する極秘情報が記された匿名FAXが届き、吉岡は上司の陣野から調査を任される。やがて内閣府の神崎という人物が浮上してくるが、その矢先、当の神崎が自殺してしまう。神崎の死に疑問を抱いた吉岡は、やがて同じようにかつての上司であった神崎の死に疑問を持つ内閣情報調査室(内調)の若手エリート、杉原拓海と巡り会うのだったが…。

<感想>先に「記憶にございません!」をレビューしてしまった。政財界のことを、風刺劇のように面白く描いている三谷監督に、おおいに感心してしまった。政治を娯楽作品みたいに、喜劇仕立てに描くのはいいことです。「新聞記者」は、だいぶ前に鑑賞した映画だったが、どうしても書けずに日にちが過ぎ去っていく。難しい作品だっただけに、うやむやにしておくわけにはいかなかったのだ。

新聞記者の女性吉岡エリカと官僚の杉原拓海が、政府役人の自殺をきっかけに政権の恐るべき計画を暴くというもので、古めかしい社会派映画を一歩も出ないのだ。映画は、首相ご執心の「医療系大学の新設」の不正を内部告発するFAXが送られてくるところから始まる。続いて「文科相子息不正入学問題」で、引責辞任をした事の真相を知る元局長と女性議員との“不適切な関係”が暴露されたり、政権よりのジャーナリストのレイプ疑惑がもみ消されたりと、内部告発に走った役人が追い詰められて自殺したり。現実に似た事象が緊迫したタッチで展開されていくのだ。

描かれる事柄はフィクションでも、内調こと「内閣情報調査室の機能が過大に描かれていても、異常な緊迫感や切迫した空気はリアルに伝わって来たことは間違いない。

記者の吉岡エリカを演じるシム・ウンギョンも、内閣情報調査室員の松坂桃李も悪くはないが、まぁ普通程度のサスペンスはある。ですが、細部がそれを壊してゆく。

例えば内閣情報調査室員の広いオフィスがなぜか暗くて、あれでは「悪の組織」になってしまっている。劇場用パンフレットには「大胆でスタイリッシュな空間設計」とあったが、それがダメで普通に描いていればいいのに回避しているのだ。

松坂桃李が自殺をした先輩の隠蔽していた文書を入手して、真相が明らかになるという。安易な筋運びとあいまって、虚構の力が軽く見積もられているのである。

この映画の原案となった小説「新聞記者」は読んでいませんが、東京新聞記者望月衣塑子によるノンフィクション。「モリ・カケ」と呼ばれる騒動が明るみに出て、加計学園問題のことではないかと。獣医学部認可に関して安倍晋三首相の意向が強く働いたことを示す文部科学省の内部文書を描いていることだ。

だが、これはあくまで“フィクション”である。だから観る者は、描かれている登場人物のモデルを必然的に頭に思い浮かべてしまうのだ。ただし細かいところはフィクションであり、映画としての演出が加えられている。その意味で実在の人物を、TVモニターとはいえ登場させるのが得策だったかどうかは疑問である。

中でも松坂桃李の上司を演じた田中哲司が、なかなかの存在感でした。著名なジャーナリストを父に持ち、母は韓国人、アメリカで生まれ育ったという女性記者を演じたシム・ウンギョンは、難しい役に果敢に挑み、芯の強さを感じさせていて熱演でした。

観ていて期待外れのような感じがしてならない。松坂桃李は、主演のシム・ウンギョンに比べてキャラが弱すぎるからだ。逆に言えば、それだけウンギョンの演技が素晴らしかった。何と言うか、あのラストの走りっぷりなんかは、絵になり過ぎている。顔は可愛いのに、必死になって追い求めて、燃えている。本当だったら、彼女の役だって、日本人女優が演じるべきなのに誰もいなかったのだろう。

それに惜しかったのが、「新大学で生化学兵器研究」という一面トップのスクープ記事がボツになったこと。そう現在この国は、行政機構もマスコミも、深く病んでいるのだから。その原因が政治の現状にあるのは言うまでもないこと。この映画の中では、首相も官房長官も一人の政治家も登場させずに、その影響力の大きさを不気味に暗示させている。今の日本社会を覆う、闇の怖さを思い知らされた。

 

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